杉戸洋 とんぼ と のりしろ Hiroshi Sugito module or lacuna 2017年7月25日[火] - 10月9日[月・祝]

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2017年10月9日(月)
杉戸洋さんと楽しむワークショップ
「あんみつのかんてんの色」

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*9月23日に本展関連事業として開催されたワークショップ「あんみつのかんてんの色」。東京都美術館インターンの角田さんによるレポートです。ワークショップに参加くださった皆様、ありがとうございました。

企画展「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」の会場である地下に広がる吹き抜けのギャラリーは、いま「光」と「色」で満たされています。9月23日(土)、出品作家の杉戸洋さんと「色」について考えるワークショップ「あんみつのかんてんの色」を開催。特製カラーフィルターを片手に色探しの探検に出かけ、その気づきを活かして皆で「あんみつ」の盛りつけにチャレンジしました。

私たちの生活は様々な色で溢れています。窓を開ければ空の「青色」が広がり、道を歩けば樹木の「緑色」が目に入る。牛乳の「白」、コーヒーカップの「赤」、目に飛び込んでくる「色」はそれぞれ名前を持っているものの、色の世界は実のところ、そんなに単純ではありません。杉戸さんは、画家アンリ・マティスが手掛けたステンドグラスを例に「色のふしぎ」を話します。使われている色は「黄」「青」「緑」の三色であるはずなのに、外から差し込んだ光に、教会の床に映ったステンドグラスの影が、ほのかに赤く染まって見えた。マティスはきっと、ガラスの青色を単なる「青」とは見ていなかったし、緑色を単なる「緑色」とは見ていなかったのだろう。今回のワークショップでは、作家の杉戸洋さんと一緒に、様々な方法で「色のふしぎ」を体験します。

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「色のふしぎ」を確かめるべく、参加者のみなさんが最初に取り掛かったのが「カラーフィルター」づくり。透明なフィルムの上にカラーペンで思い思いに色を重ね、はさみで好きなかたちに切り抜いたら出来上がりです。完成したフィルターを手に持って一行は美術館の外へ。秋晴れの空の下、それぞれがフィルターを掲げ、色彩を通して変化するいつもと違った見え方を楽しみます。複数重ねたフィルターに光を通すと、自分の見ている世界が思ってもみなかった色に染まったり、地面に映るフィルムの影が、虹のように輝いたり。自分でつくりあげた色の世界を楽しんだら、今度はフィルターなしで上野公園を眺めてみます。すると普段は気に留めることのない、自らを取り巻く数々の色がきらきらと鮮明に目に映って来ます。「お天道様の下ならどんな色でもきれいに映る。太陽の下では失敗はない」と語る杉戸さん。自然が生み出す色の数々に、人が飽きることはありません。

外の光と色をいっぱいに吸収した一行は展覧会場に移動。会場を見渡せば、ここにも言葉にはならない多数の色彩がひしめき合っていることに気づきます。例えばエスカレーターの横に設置される色鮮やかなプレートについて。杉戸さんのお話によれば、オレンジ色に染まって見えるのは光の具合によってであり、実際にはいま見えているのとは全然違うピンク色であり、反対側から眺めれば、目に映る色合いは再び変化するとのこと。あるいは、会場奥の窓に設置される4色のシートについて。こちらも外から差し込む光の移ろいによって、会場が表情を変えることを話します。大きな窓からよりたくさんの量の光を受けて、先ほどカラーフィルターを通して実感した効果が会場内で拡大するわけです。

今度は、前川建築の一風変わった床の色に目を向けます。表現が難しいこの色は、いったいどんな色だと言えるでしょうか? なんだか美味しそうな色ですね。チョコレート色? ミルクチョコが近いかな。ダークチョコが近いかな。色の話題に参加者の会話も弾みます。タイルの隙間、溝の部分について、杉戸さんは「小豆を潰したような色だね」とコメント。話によれば、杉戸さんは、本展準備にあたって最初に東京都美術館を訪れた際に、この会場の色調について「あんみつが似合う」ように思われたとのこと。ギャラリーの床の色を本物の小豆で確認するために、参加者一行はあんみつの材料が待つ、アートスタディールームに戻ります。

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きれいに手を洗ったら、それぞれが持参した器を片手にあんみつの盛りつけのスタートです。カラーフィルターを使って様々な色を吸収した目で、今度は食べ物が持つ色彩をじっくり観察。あんみつの色の組み合わせを考えて行きます。欲張ると汚くなってしまうし、遠慮しすぎると心もお腹も寂しい。杉戸さんが言うには、食べ物の盛りつけも絵を描くのも一緒だそう。赤いさくらんぼは、白いアイスクリームの上に乗せることでぐっと美味しそうに見えるけれども、てんこ盛りが良いのか、腹八分目が良いのか、バランスを見極めることも忘れてはなりません。

材料を見回して気になるのが「生姜」の存在です。蕎麦とあんみつをセットで食べることにこだわりを持っている杉戸さんが、学生におつかいを頼んだ際に、「わさび」と間違えて買って来られてしまったとのこと。使い道に迷った挙句、あんみつにあわせてみたら意外と美味しく、それからあんみつにかける定番になったそうです。杉戸さんによれば、ともに研究が必要な点で「色」も「味」も一緒。「よく味わって」食べることが新たな美味しさを教えてくれるように、色を「よく見る」ことも新たな可能性を引き起こします。そう考えると「色のふしぎ」を紐解くヒントは「よく見て観察すること」にあるようには感じられないでしょうか。

(東京都美術館 インターン 角田かるあ)

2017年9月12日(火)
《module》と水野製陶園のタイル

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会場風景《module (for room A)》
photograph by Mie Morimoto

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水野製陶園
photograph by Hiroshi Sugito

本展では、吹き抜け空間の底から見上げるような位置に《module》という作品が展示されてます。この空間から着想された、高さ約4m×幅約15mにも及ぶ大作には、愛知県知多半島の常滑にある水野製陶園のタイルが使用されています。前川國男建築である当館の「打込みタイル工法」による外壁や、会場であるギャラリーの床などに使われているレンガ色のタイルも、同じ常滑産です。
水野製陶園は常滑焼発祥の地に1947年に創業し、建築などに使われるタイルの製造などを行っています。そしてここは、前川建築である国立国会図書館新館に使われている青い釉薬のかかったタイルや、杉戸さんの出身大学である愛知県立芸術大学「講義棟」(設計:吉村順三)の陶壁画(絵付け:画家・片岡球子)が生み出された場所でもあります。ギャラリーB2Fの回廊部分では、杉戸さんが何度も常滑に通い、刷毛などを使って釉薬を重ねた一つ一つのタイルの輝きを間近に見ることができます。近くからも遠くからも、ゆっくりとご堪能ください。

2017年8月30日(水)
「とんぼ と のりしろ」開幕! そして図録。

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photographs by Mie Morimoto

1カ月越しですが7月25日(火)に企画展「杉戸洋 とんぼと のりしろ」が無事開幕いたしました。たくさんの方に会場に足を運んでいただいており、心から感謝しております。

ギャラリーの空間全体が作品となっている本展。時間や光によって見え方が変化するということもあり、本展のチケットは1枚につき2度入場いただけます(チケットの半券をお持ちください)。ぜひ何度も足を運んで、ゆっくりとした時間をお過ごしください。

展覧会開幕後すぐに制作に取りかかった図録ももうすぐ印刷に入ります。
写真家・森本美絵さんが撮り下ろしてくださった、ここでしか見ることのできない会場風景に加え(少しだけご紹介します)、杉戸さんが撮った水野製陶園やアトリエの写真も収められています。デザインは本展の広報印刷物も手がけてくださった須山悠里さん。また追ってご紹介したいと思いますが、ぜひ楽しみにお待ちください。
9月中旬完成予定で、現在予約受付中です!(M)

2017年7月19日(水)
「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」施工・展示風景

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先週から夏の企画展「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」の施工・展示が始まりました。全館休館期間中も朝から晩まで作業が着々と進んでいます。
初日、ロビーから吹き抜けの展示室を見下ろすガラスに緑とビリジアンの色のシートが貼られました。この写真のあと外に繋がる窓にもシートが加わり、一日を通して色と光が刻々と動き、変化してみえます。
杉戸さんがほどこす様々なしつらえで、何度も足をふみいれているギャラリーの空間をみる目がまた新たに開かれる感覚をおぼえます。